個人再生の手続き中にやってはいけないこととは?個人再生できないケース、失敗するケースを紹介
個人再生(個人版民事再生)は債務整理のひとつで、裁判所を介して借金を「大幅に」減額する手続きです。
債務整理とは、法的に借金を減らしたりゼロにできる可能性がある手続きなのですが、「個人再生」もその手続きの一つです。裁判所に借金減額を申し立てて認められれば、借金を減らすことができます。
実は、個人再生の手続き中にやってはいけないことがいくつかありますがご存知でしょうか。守らないと、個人再生ができず失敗に終わってしまう可能性が高いです。
せっかく借金が減る可能性があったのに…と後悔しないためにも、個人再生の手続き中に何をやってはいけないのか、万が一やってしまった場合の対処法などを中心に、詳しく解説するので参考にしてみてください。
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そもそも個人再生とは?減額の仕組みや条件、メリット・デメリット、流れを確認
個人再生は、借金の返済ができないことを裁判所に申し立て、認可されれば借金減額してもらえる手続きです。
民事再生法に規定されている手続きであり、利息だけでなく、借金総額を約5分の1(3,000万円以上の場合は10分の1)に圧縮することが可能です。
借金を根本から解決できる可能性が高い、借金救済の措置と言われている「債務整理」の一つです。
個人再生は、「再生計画に則って弁済ができるかどうか?」が大変重要になってきます。
借金圧縮後も借金は残るため、引き続き借金返済をしていかなくてはなりません。よって、「安定した収入がある」というところがクリアできないと、個人再生の手続は取れないでしょう。
例えばアルバイトの場合、相当の期間で雇用されている実績があれば認められるが、短期バイトであったり、アルバイト先をどんどん変えているという場合は認められない可能性があります。
5,000万円を超えた借金総額の場合も個人再生はできません。他にも個人再生ができないケースについては後でお伝えします。
先に、個人再生のメリット・デメリットは以下となります。
メリット | ・減額効果が高い(比較的多額の借金でも大幅に圧縮できる) ・3年(最大5年)に返済期間を延ばせる ・住宅ローン特則の適用でマイホームを残せる ・自動車ローンを完済していれば車も手元に残せる ・給与などの差し押さえを阻止できる効力がある ・借金の理由を問われない(ギャンブルや浪費による借金でもOK) |
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デメリット | ・安定かつ反復した収入がないとできない ・ブラックリストに載る ・官報に載る ・手続きが複雑で長期間かかる、費用も高額 ・税金や養育費など減額できない借金もある ・保証人や連帯保証人に迷惑がかかる |
個人再生は、「利息」だけカットできる任意整理とは違って、「元金」も大幅に減らせるのがメリットです。
自分の借金を減らすことができるのか、それには「個人再生」が適しているのかについて、簡易ではありますが「借金減額シミュレーター」で無料で調べることが可能です。
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個人再生の手続きは次のような流れで進んでいきます。
- 弁護士に相談・依頼
- 債権者へ受任通知の送付、取引履歴の開示請求
- 利息の引き直し計算
- 申し立ての書類作成
- 裁判所に申し立て
- 仙人された再生委員との面談
- 再生手続きの開始決定
- 債権者が債権届出書を提出
- 裁判所に再生計画案を提出
- 認可・不認可の決定
- 許可されれば、再生計画に沿って返済開始
個人再生の手続きは複雑で、たくさんの書類が必要です。申し立ての準備だけで半年ほどかかることも珍しくなく、返済が開始するまでトータルで約1年~1年半と、長い期間を要します。
弁護士や司法書士のような専門家に依頼する方が、スムーズで間違いがないでしょう。
この期間中にやってはいけないことを見ていきましょう。
個人再生の手続き中にやってはいけないこと9つ
個人再生でやってはいけないNG行動は、次の9つです。
- 虚偽申告をすること
- 書類の提出期限を守らないこと
- 裁判所の求める手続きを怠ること
- 履行可能性テストでの積み立てを怠ること
- 返済期日を守らないこと
- 特定の借入先だけ優先して返済すること
- 新たな借り入れをすること
- 浪費やギャンブルをすること
- 転職や退職によって収入が減少すること
これらの行動をしてしまうと、申し立てをしても棄却されたり、不認可になったりします。手続きが廃止されることもあるので、十分に注意しましょう。
それぞれ詳しく解説していきます。
①虚偽申告をすること
個人再生の手続きでは、家計の収支状況や所持している財産などを細かく書類に記載して報告する必要があります。
「収入や財産を少なく申告すれば、返済額を少なくできるのでは?」と思いがちですが、嘘の報告は厳禁です。
虚偽申告すると、正確な情報をもとに再生計画案を立てられず、申し立てが認められなくなります。財産を隠した場合は詐欺再生罪として罰金が科されるリスクもあるので、必ず正直に報告しましょう。
②書類の提出期限を守らないこと
求められた書類はすべて期限内に提出しなくてはいけません。提出書類の中でも特に重要なのは「再生計画案」です。
再生計画案の期限を守れなかった場合、手続きは廃止されます。
手続きのスケジュールは裁判所によって決められているので、個人の都合で変更することは原則できません。
③裁判所の求める手続きを怠ること
個人再生の手続きは、決められたとおりに遂行していく必要があり、裁判所や個人再生委員の指示には従わなくてはいけません。
打ち合わせに行かない、裁判所や個人再生委員から説明を求められた際に拒絶するなど、指示に従わないのは厳禁です。
求められた手続きを怠れば、申し立ては却下され、手続きは廃止されてしまうので、注意しましょう。
④履行可能性テストでの積み立てを怠ること
再生計画案が認められると、再生計画に沿って返済を継続していかなくてはいけません。計画どおり返済していけるかどうかをチェックするため、申し立て後、「履行可能性テスト」というものが行われます。
積み立てを怠って履行可能性テストを通過できなかった場合、計画どおりに返済することはできないと見なされ、手続きは廃止されてしまいます。
⑤返済期日を守らないこと
減額された借金は、再生計画に沿って毎月決められた額を支払っていく必要がありますが、遅らせることはNG。
計画に従ってお金を返していくことを条件に裁判所は減額を認めているため、計画どおりに返済できないと、手続きは廃止されてしまいます。
手続きが廃止されると、借金の減額はなかったことになり、元どおりに戻ってしまうので注意が必要です。
⑥特定の借入先だけ優先して返済すること
個人再生は任意整理と違って債権者を選んで整理することはできないため、すべての借金が手続きの対象となります。
すべての借入先を平等に扱うことは個人再生や自己破産の大原則。手続きにあたっては、自分が借り入れしている貸金業者や銀行などはすべて裁判所に報告する義務があります。
「昔から借り入れしていてお世話になっているから早く返したい」と思うような借入先があるかもしれませんが、特定の借入先だけを優先して返済することは禁止されています。
⑦新たな借り入れをすること
個人再生を申し立てるには、債務額を確定させておく必要があります。申し立ての準備中や申し立て後も借り入れを繰り返していては、債務額がいつまで経っても確定しません。
個人再生をするのに、さらにお金を借りることで借金を増やすという行動は悪意があると見なされ、詐欺罪に問われる可能性もあります。悪質であると判断された場合は、不誠実な申し立てとして個人再生が認められなくなります。
⑧浪費やギャンブルをすること
個人再生では、減額された借金を3~5年かけて継続的に返済していく必要があるため、安定かつ反復した収入があることが前提です。
しかし、いくら収入があっても浪費してしまえば返済は難しくなります。
個人再生は借金の理由を問われず、ギャンブルが原因の借金でも問題なく手続きできるのがメリットのひとつですが、手続き中の浪費やギャンブルはNGです。
⑨転職や退職によって収入が減少すること
個人再生をすると決めてから転職や退職をすることは可能ですが、リスクの高い行動です。収入が減り、返済に充てるお金を確保できない可能性があるからです。
手続き開始当初に、返済できるだけの安定かつ反復した収入がないと判断されてしまうと、そもそも個人再生は行えません。また、手続き開始当初は十分な収入があっても、転職や退職によって収入が減り返済が滞ると、手続きは廃止される可能性があります。
失敗しないためにしてほしいのが「専門家への相談・依頼」
個人再生の手続きは、個人が自力でするのは困難であるものが多いかなという印象です。(申立書類の作成、債権額の調査、再生計画案の作成など)
弁護士や認定司法書士へ依頼することで、法律上難しい内容をクリアすることができる他、交渉先である金融業者に向けたしっかりとした内容の再生計画案を提案してもらえたり、交渉もスムーズに運ぶことが期待できます。
何より、自分の借金の減額方法として、「個人再生」が最適なのかについて教えてもらえたり、手続きの際に失敗したり後悔する結果になるリスクを減らせるというメリットもあります。
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個人再生についてしっかりと理解をしていないと、失敗に終わってしまった…という残念な結果を導きかねません。
個人再生が失敗するケースやできないケースは他にもある
やってはいけないことをやってしまい、個人再生が失敗に終わることは実際にあります。失敗する割合は全体の数パーセントに過ぎませんが、十分に気を付けたいものです。
他にも、個人再生が失敗に終わるケースがいくつかあるので紹介します。
前述した以外に個人再生が失敗する原因は、次の4つです。
- 対象となる借金の総額が5,000万円を超えている
- 住宅ローン特則の要件を満たしていない
- 再生計画案の内容が実現不可能
- 手続き費用を納付しない、期限を守らない
詳しく見ていきましょう。
①対象となる借金の総額が5,000万円を超えているとできない
個人再生を行うには、次の3つの要件を満たしている必要があります。
- 安定かつ反復した収入がある
- 3~5年で返済できる見込みがある
- 借金の総額が5,000万円以下である(住宅ローンは除く)
これらのうち1つでも欠けていると、個人再生は認められません。
対象となる負債額は住宅ローンを除外して5,000万円以下と決められており、「個人再生における5,000万円要件」とも言われます。借金が5,000万円を超えている場合は要件違反となって、申し立てができません。
②住宅ローン特則の要件を満たしていないと利用できない
個人再生では、住宅ローン特則(住宅資金特別条項)を利用すれば、マイホームを手放すことなく借金を減額できます。住宅ローンは従来と同じように返済するか、リスケジュールすることも可能です。
しかし、住宅ローン特則はマイホームを残せるというメリットの大きい制度であるため、利用にあたっては次の要件を満たしておかなくてはいけません。
- 個人再生をする本人が所有している居住用の建物であること
- 住宅資金貸付債権であること
- 住宅資金貸付債権以外の債権がないこと
- 保証会社による代位弁済の履行日から6ヶ月以内に申し立てがなされていること
住宅資金とは、住宅の購入や建設、改良にかかったお金を指し、それらの貸付にかかる債権が住宅資金貸付債権です。分割払いの定めがあることも必須要件で、一括払いで支払っている場合に住宅ローン特則は利用できません。
また、住宅に抵当権が設定されていることも要件のひとつですが、住宅資金貸付債権を担保するための抵当権以外に担保権がある場合、住宅ローン特則は利用できません。
さらに、住宅ローンの返済が遅れると保証会社が債権者に代位弁済を行いますが、代位弁済が始まってから6ヶ月を過ぎてしまうと、住宅ローン特則は利用できなくなります。
住宅ローン特則を利用できるかどうかの判断は慎重に行う必要あるので、自己判断せず弁護士に相談しましょう。要件を満たさないまま手続きをしても棄却されてしまい、個人再生を行えません。
③再生計画案の内容が実現不可能である場合、認められない
再生計画案を裁判所に提出した後、裁判官が「この計画には無理がある」と判断すれば、不認可となります。
再生計画案は、無理なく実現できる内容にすることが大切です。返済期間や返済額などは弁護士とよく協議した上で決めましょう。
④手続き費用を納付しなかったり、期限を守らない場合も行えない
個人再生は債務整理の中で最も費用が高額で、裁判所費用と弁護士費用合わせて50~80万円かかるのが一般的です。
- 裁判所費用(相場は18~28万円)
- 予納金、収入印紙、切手、封筒、個人再生委員への報酬などが含まれます。個人再生委員への報酬は裁判所費用の中でも高く、相場は15~25万円。裁判所によって費用には差が出ます。
- 弁護士費用(相場は50~60万円)
- 相談料、着手金(弁護士に依頼したときに必ず発生する費用)、報酬金(案件が成功したときに発生する費用)が含まれます。着手金は約30万円、報酬金は約20万円が相場で、住宅ローン特則を利用すると10万円ほど高くなります。
個人再生委員への報酬は、申立時や申立後に現金で一括払いするよう決められており、裁判所費用の納付に備えてまとまったお金を用意しておく必要があります。
費用を用意できず納付できない場合や納付期限を守らなかった場合、個人再生は行えません。
法テラスは収入要件などを満たせば、無料法律相談や弁護士費用の立て替えサービスを利用できる組織です。法テラスなら、通常50~80万円かかる個人再生を、20~25万円程度で行えます。
個人再生に失敗しても対処法があるので、あきらめないで!
個人再生に失敗してしまったときは、どのように対処するのがよいのでしょうか?対処法は2つあります。
①もう一度個人再生を申し立てる
個人再生は、一度失敗しても再度申し立てることが可能です。
- 書類の不備で申し立てできなかった場合→書類を揃える
- 再生計画案の提出まで進んで不認可となった場合→現実的な再生計画案に練り直す
といった方法で、再度個人再生に挑戦できます。
ただし、個人再生には次の2種類があり、給与所得者等再生を利用して失敗した場合、7年以内は給与所得者等再生の再申し立てはできません。
- 小規模個人再生
- 個人再生の基本となる手続きで、給与所得者等再生よりも返済額を少額に抑えることができます。個人事業者を対象としていますが、事業者以外の方にもよく利用されています。
- 給与所得者等再生
- 債権者の同意を得られないなど小規模個人再生を利用できない場合に選ばれる手続きです。給与所得者等再生では債権者の意向を無視することができます。サラリーマンのように給与の変動が少ない人を対象としています。
②自己破産での解決を試みる
もう一度個人再生を申し立てても失敗する恐れのある人は、自己破産をするという手段があります。個人再生に失敗後、自己破産を申し立てることは可能です。
「安定かつ反復した収入がないため手続きを開始できなかった」「収入が減って再生計画を履行できなかった」という人は、自己破産なら免責が認められれば借金をその後返済する必要がなくなるため、抱えている借金問題を一気に解決できる可能性が高いです。
ただし、家や車などの財産が処分されるなど、個人再生に比べてデメリットはかなり大きいので、自己判断せず専門家とよく相談して決めましょう。
個人再生に失敗しないために押さえておきたいポイント
個人再生に失敗すると、それまでに費やしたお金は返ってこず、時間や労力も無駄になってしまいます。
個人再生を1回で成功させるために、次のポイントを押さえておきましょう。
①個人再生のルールを理解しておこう
個人再生が失敗に終わるのは、やってはいけないことをする、要件を満たしていない、正しいルールを理解していないことが主な原因です。
②借金が多額になる前に申し立てをしよう
個人再生は5,000万円以下であれば多額の借金でも減額できますが、重要なのは5分の1~10分の1に減額された借金を3~5年で返済していけるかどうかです。
借金の返済が苦しいまま放っておいても借金は増える一方です。膨らみきって多額になる前に申し立てをすることで、個人再生の成功率は高まります。
③債務整理に強い弁護士に依頼しよう
個人再生の手続きは非常に複雑で、専門的な知識やスキルも必要なため、自力で行うには限界があります。
自力手続きは失敗する可能性が高いので、やはり司法書士や弁護士などの専門家に依頼することをおすすめします。
専門家に個人再生を依頼すれば、次のようなメリットがあります。
- 債権者からの督促や取り立てがストップする
- 手続きがスムーズに進む
- 申立書類の作成や裁判の準備など複雑な手続きを代行したりサポートしてもらえる
- 借金問題の解決に向けて適切なアドバイスをもらえる
弁護士などに依頼すると、債権者に受任通知が届いた時点で、督促や取り立てが止まります。一定期間、借金の返済からも解放され、自分で手続きするよりも早く借金問題を解決することができます。
債務整理に強く、個人再生の実務経験が豊富な専門家ならば、手続きもスムーズに進みます。指示された作業をこなすだけで個人再生を成功させられるでしょう。
ちなみに、債務整理は司法書士に依頼することもできますが、司法書士に扱えるのは1社あたり140万円以下の借金なので、ここを忘れないようにしてください!借金総額によっては、弁護士でないと対応ができません。
個人再生を成功させたいなら、早めに専門家に相談しよう
個人再生は、司法書士や弁護士などの専門家に依頼することで失敗するリスクを大幅に減らせます。
手続き中やってはいけないことや注意点についても詳しく教えてもらえるでしょう。
インターネット上のサービスで、無料で24時間いつでも利用でき、自分の借金をどれだけ減額できるのかを大まかに診断できます。
個人再生で「減額できる」と分かれば、目の前の借金問題から開放される可能性が高いです!すぐに専門家に相談してみると良いでしょう。
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個人再生でやってはいけないことをもしもしてしまった場合、手続きの開始が認められない「棄却」や、再生計画案が認められない「不認可」のほか、手続きが「廃止(打ち切り)」になることもあります。